インフォグラフィックの基本を全9回で解説します。今回はその第8回です。第1回から読むにはここからどうぞ。
はじめに
前回は、インフォグラフィック制作の流れを見ていきました。今回は、制作に必要なスキルセットを考えます。
そのためにまず、制作の流れをもとに、インフォグラフィックならではのデザインプロセスであるSTEP 2〜6について、どんなスキルが必要になるのか考えてみましょう。

必要なスキルセット
STEP 2〜6の工程をスキルでおおまかに言い換えると、「分析」「編集」「表現」の3つです。

続いて、それぞれどのようなことをするのか、ひとつずつ見ていきます。
分析スキル
インフォグラフィックの材料になる情報を集め、それを構造化したり、グラフにして、パターン(規則性)や法則、ポイントを見つけるのに使います。

このプロセスでの発見・気づきをもとに、インフォグラフィックの切り口が見えてきます。したがって、インフォグラフィック制作の流れの中では、STEP 2〜4にまたがります。

編集スキル
インフォグラフィックで何を伝えるのか、情報を組み合わせたり、取捨選択して、切り口を決め、インフォグラフィックに入れる要素をまとめるのに使います。

このプロセスを通じて洗い出した要素をもとに、レイアウトを組み立てていきます。したがって、インフォグラフィック制作の流れの中では、STEP 3〜5にまたがります。

表現スキル
要素をレイアウトに落とし込み、そこにグラフィック(イラストレーション、色彩、その他グラフィック表現)を加えて、ビジュアルを作り込むのに使います。

インフォグラフィック制作の流れの中では、STEP 4〜6にまたがります。

スキルの関係
「分析」「編集」「表現」の3つを中心に、それぞれに含まれる主なタスクを整理すると次のようになります。

ポイントは、「分析」と「編集」、「分析」と「表現」、「編集」と「表現」が面している点です。これらはバラバラに寄せ集めたスキルセットではなく、一体化したスキルセットであることがインフォグラフィック制作において重要です。

なぜなら、インフォグラフィック制作のプロセスの中で、スキルの重なりが必要になるためです。

ここで、これまで触れてこなかったSTEP 1(企画)とSTEP 7(検証)についても、触れておきます。
企画段階では、インフォグラフィックを使う目的の整理や、題材選び、目的を果たすにはどんなアウトプットがいいのかなど、「分析」「編集」「表現」の観点から考えます。

それから最後の検証段階では、内容と表現について、多角的にチェックするため、やはりここでも3つを使います。

したがって、STEP 1とSTEP 7も含めた一連のインフォグラフィック制作の流れは、「分析」「編集」「表現」の3つのスキルの組み合わせで実現できます。
チームで作る場合
インフォグラフィックは制作に必要なスキルが多岐にわたるため、チームで制作することもあります。たとえば、「分析」「編集」「表現」の3つを分けて、リサーチャー兼アナリスト、プランナー兼エディター、デザイナー兼イラストレーターで取り組む形です。

チームで作る際に大切なのは、メンバー間に階層を作らないことです。たとえば、分析メンバーは一番情報に詳しいため、詳細をすべて盛り込みがちです。
また、編集メンバーは思い描いたストーリーに情報を当てはめようとしたり、ストーリーを強調した表現を求めてしまうことがあります。
一方、表現メンバーは、分析メンバーや編集メンバーに言われるがままに修正を繰り返して、インフォグラフィックの肝である「情報の関係」が見えにくいものや、客観性を欠いたものを作ってしまう可能性があります。
表現で関わる場合は、インフォグラフィックの対象について十分理解した上で関与すること、情報の受け手目線で意見することが重要です。
このように、インフォグラフィック制作では、各領域の専門家がそれぞれの領域に責任を持ちつつも一体になって作り上げなければ、うまくいきません。
おわりに
今回は、インフォグラフィック制作に必要なスキルセットを見ていきました。
次回は、スケジュールや見積の考え方をまとめます。
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運営

櫻田潤
インフォグラフィック・デザイナー
インフォグラフィック専門のコンテンツレーベル「ビジュアルシンキング」運営。📚著書『たのしいインフォグラフィック入門』他