はじめに:Oatlyとは
今回は、スウェーデンの会社「Oatly」によるインフォグラフィックの活用事例を紹介します。
Oatlyの創業は1994年で、メインプロダクトはオーツミルク──オーツ麦から作られた植物性のミルクで、牛のミルクと比べ環境負荷が低く、代替ミルクとも言われます。

2021年の上場時にSEC(米国証券取引委員会)へ提出した目論見書によれば、Oatlyのミルク1リットルあたり、通常のミルクと比べて、温室効果ガスは80%、土地利用は79%、エネルギー消費は60%削減できるとしています。
ミッションには「地球資源に無謀な負担をかけることなく、より良い食事、より健康的な生活を容易に送れるようにすること」を掲げ、ミルクの他に、植物性のアイスクリーム、ヨーグルト、パンに塗るスプレッド、クッキング用クリームなどを製造。小売販売とフードサービス(コーヒーショップやホテルなどへの提供)が主な売上です。

ビジュアルコミュニケーションの特徴
Oatlyはパッケージはじめ、従来のミルクに対してオルタナティブなイメージを全面に打ち出したデザインが特徴的です。

でももともとは、ここまで尖った打ち出しをするブランドではありませんでした。ルンド大学でオーツ麦から牛乳に代わる栄養が作れることを発見したRickard Östeが兄弟のBjörn Östeと、アレルギーやさまざまな理由で牛乳を飲めない人に向けて商品化したのが始まりで、2012年にToni PeterssonがCEOに就任するまでは一般的な食料品ブランドと変わらないイメージで売っていました。
新しいCEOは仕事を一緒にしたことのあったJohn Schoolcraftをチーフ・クリエイティブ・オフィサーに招くと、Oatlyのイメージを食料品ブランドからライフスタイルブランドへ変えていきました。
その際、重要視したのがパッケージで、たくさんの広告宣伝費を使う代わりに、商品パッケージをオウンドメディアと位置付け、側面に伝えたいことをぎっしり詰め込みました。

ざらついたグランジ加工、アナログを感じさせる文字を使えば、Oatlyになれるのか──答えはノーです。ブランドにとって重要なのは、メッセージや企業姿勢とビジュアルの一体感、それから一貫性です。たとえばOatlyの場合は、この世界観が“堅苦しいはずの”IR資料にも反映されています。

インフォグラフィックの活用
当然ながら、年次で出しているサステナビリティ・レポートも、デザインはコントロールされています。

そんな中、2021年版のサステナビリティ・レポートでは、インフォグラフィックを取り入れていて、冒頭で各種データのサマリーを伝えるのに使っています。

この他、製造プロセスを説明するページでも、サイトに掲載しているインフォグラフィック動画と同じビジュアル要素を活用しています。

おわりに
Oatlyのインフォグラフィックの面白いところは、情報をクリアに伝えるという「情報の価値」を維持しながら、混沌としたオルタナティブな世界観も訴求しようとしている点です。
基本的にざらついた加工やアナログ感のある文字は、決して見やすいものではありません。Oatlyのデザインからは、インフォグラフィックとしてのわかりやすさよりも、「見たいと思う人だけ見てくれ」という割り切りは感じるものの、と言ってまったく情報性を無視しているかと言うとそんなこともなく、しっかり構造化されています。
肝になっているのは色数で、白・黒・グレー・水色の4色が規律をもって使われています。

一方、決算資料に関しては、サステナビリティレポートとは位置付けが多少異なるところもあり、もう少しわかりやすさを意識したデザインになっています。

全体のトンマナを揃えながらも、コミュニケーションの種類によって表現を使い分けているところに、上手さを感じます。
ソース
Oatly
Oatly Code of conduct(Oatly)
Oatly Group AB (OTLY)(Nasdaq)
Oatly oatmilk coming to Starbucks nationwide in the U.S. on March 2(Starbucks)
‘People said I was ruining this company’: John Schoolcraft on the transformation of Oatly(The Challenger Project)
Prospectus(SEC)
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櫻田潤
インフォグラフィック・デザイナー
インフォグラフィック専門のコンテンツレーベル「ビジュアルシンキング」運営。📚著書『たのしいインフォグラフィック入門』他