インフォグラフィック活用の背景

インフォグラフィックの基本を学ぶシリーズ(全9回)。今回はその4番目の記事です。1番目の記事から読むにはこちらからどうぞ。

はじめに

前回は、インフォグラフィックの価値を考えました。

今回は、インフォグラフィックがどんな課題を解決するものなのか、インフォグラフィックが求められる背景を2つの視点から見ていきます。

(1)情報の視点

何十年も言われてきた「情報爆発」を筆頭に、情報環境は変化し続けています。1998年にGoogleが創業し、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」とミッションを掲げましたが、Googleが解決してきたこととは別に、情報に関する新たな問題が生まれています。

情報爆発

なぜインフォグラフィックを使うのか 情報爆発

無数のウェブサイト、ソーシャルメディアやチャットなどコミュニケーションツールの普及、デジタル端末やスクリーンが至るところにできたことによって、情報の発信手段と流通場所が増えました。情報爆発は止まることなく、これからも続くと予想できます。

加速化

なぜインフォグラフィックを使うのか 情報の加速化

絶え間なくアップデートされるタイムライン、新着を知らせる通知──少し前の最新が一瞬で切り替わり、過去のものに。重要な情報、普遍的で長く必要とされる知識も他の情報と一緒に流れていってしまいます。

細切れ化

なぜインフォグラフィックを使うのか 情報の細切れ化

コンビニでケーキがコンパクトなカップケーキで売られるように、流通場所に合わせて情報のサイズも変わります。ソーシャルメディアやチャット形式の情報発信・受信が増える中で、情報の細切れ化が進み、背景にある文脈や複雑な情報の関係を把握しにくくなっています。

極端化

なぜインフォグラフィックを使うのか 情報の極端化

たくさんの情報が加速的に流れていく中で注目を得るために、極端なメッセージを使うのを目にする機会が増えました。偏った情報、扇動的な情報、フェイク情報が横行し、社会の分断を増長しています。こうしたことが、気候変動や政策の行方など、多くの人が共通認識を持たなければ前進しないことの進展を妨げています。

一人歩き

なぜインフォグラフィックを使うのか 情報の一人歩き

細切れになった情報、極端な情報が不特定多数にコピーされることで、元の発信者が伝えたかった文脈から切り離されて、意図せぬ広がりを見せてしまう場合があります。一度広まったものを止める手段、訂正する手段も万全ではないため、一人歩きを始めた情報は発信者の責任範囲を超えて、広がり続けます。

ここまで情報をめぐる諸問題を見ていきました。これらに加えて、インフォグラフィック活用の背景には、コミュニケーションの構造上の課題もあります。

(2)コミュニケーションの視点

3つのハードル

コミュニケーションは、言葉なり、身振りなり、画像や動画なり、発信者が何らかの情報を発することで始まります。それに対して、受信者は興味を示し、内容を理解し、反応します。

コミュニケーションの構造

ポイントは、発信者は情報を発するだけでいいのに、受信者は興味・理解・反応の3つを求められる点です。コミュニケーションは構造上、発信者よりも受信者の負担が大きくなっています。

コミュニケーションの負担

この非対称を前提に、受信者に多くを期待する前に、発信者は内容や方法を工夫して、受信者の負担を少なくする必要があります。

インフォグラフィックは、「情報の価値」と「ビジュアルの価値」の組み合わせ(参考記事)で、情報の諸問題とコミュニケーションの課題を解決します。

インフォグラフィックが求められる背景

解決方法

溢れかえる情報と加速化で、ひとつひとつの情報に興味を持つのが難しくなっています。だからと言って注意をひくために過激な内容や表現をするのではなく、インフォグラフィックはビジュアルの魅力で解決をはかります。

情報の細切れ化や一人歩きに対しては、関係する情報をひとまとめにし、使ったデータのソース表記、制作者や発信者のクレジット表記などと一緒にパッケージ化することで解決をはかります。情報がパッケージになっていることで、保存して見直したり、共有するのにも便利です。

インフォグラフィックの価値 パッケージ

さらに、一貫性のある世界観をインフォグラフィックに反映することで、発信者ブランドの認知、信頼の蓄積にもつながります。

インフォグラフィックは、情報を単純なメッセージにして届けるのではなく、情報を読み解くための材料を一緒に届けることができるため、理解ありきの反応を生みます。

インフォグラフィックは情報の諸問題を解決しながら、受信者の負担を下げて、コミュニケーションを円滑にしていきます。

おわりに

今回は、インフォグラフィックが求められる背景を見ていきました。

次回は、具体的にどんな場面でインフォグラフィックが活きるのか、活用領域を考えていきます。

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櫻田潤

インフォグラフィック・デザイナー

インフォグラフィック専門のコンテンツレーベル「ビジュアルシンキング」運営。📚著書『たのしいインフォグラフィック入門』