炭素除去スタートアップ「Graphyte」

炭素除去の課題

気候変動対策で真っ先に挙がるのは、温室効果ガスの排出量を削減することですが、すでに大気中にはこれまでに排出した温室効果ガスがあるため、いま排出量を削減しても、それらが100年単位で残るので、その間、温暖化は進みます。

そのため、排出量を削減するのと同時に、大気中の温室効果ガスを回収して除去する技術も検討されています。「Direct Air Capture(直接空気回収)」──略して「DAC」と呼ばれ、大気中から二酸化炭素を回収して、安全な場所に保管します。

DACの課題は、エネルギーをたくさん使うこと、そしてコストが高いこと。それに対して、2023年創業のスタートアップ「Graphyte」は自然が持つ力を利用することで効率的な二酸化炭素除去の方法を見つけました。

植物は光合成で二酸化炭素を吸収します。それらは枯れて、微生物が分解したり、燃やされると、吸収していた二酸化炭素を再び大気中に放出します。Graphyteは、植物が吸収した二酸化炭素を再放出させずに閉じ込めることで二酸化炭素を回収します。

Graphyteの炭素除去

エネルギーとコストが課題のDACですが、Graphyteは、植物の光合成を利用して二酸化炭素を集めるため、効率的な回収が可能です。

炭素除去スタートアップ「GRAPHYTE 」インフォグラフィック

制作のきっかけ

テイラー・スウィフトが東京公演からスーパーボウルに向かうためにプライベートジェットで飛んだ際に排出される二酸化炭素は約40トンの見込みで、それを相殺するため、Spiritus社は大気中の二酸化炭素を除去すると発表しました(※)。

Spiritusの炭素除去のコストは1トンあたり700ドル。スウィフトの排出量は40トンなので、700 × 40で28,000ドル。炭素除去が普及するには、1トンあたり100ドルが目安とされています。

Gristの記事で、そんなDACに取り組む企業の一つとして紹介されていたのが「Graphyte」です。調べてみると自然の力を活かしたユニークなアプローチだったので、炭素除去のプロセスをまとめたいと思いました。

ラフとデザイン途中

インフォグラフィックのラフ
インフォグラフィック デザイン途中

※ 注追記(2024.3.4)
Spiritusはテイラー・スウィフトと契約を結んだわけではなく、プロモーションとして、自主的に二酸化炭素の回収を約束したようです。


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インフォグラフィック・デザイナー

櫻田潤

インフォグラフィック専門のコンテンツレーベル「ビジュアルシンキング」運営。著書『インフォグラフィック制作ガイド』『たのしいインフォグラフィック入門』


コンテンツのソース

3 Ways Taylor Swift’s Carbon Offset For Jet Use Can Make A Difference(Forbes)
Barclay Rogers | LinkedIn
Climate Company Spiritus to Remove Carbon from Taylor Swift’s Football Flight from Japan(Business Wire)
Climate tech company pledges to offset Taylor Swift’s carbon emissions for Super Bowl trip(The Athletic)
DAC(直接空気回収技術)とは?(産総研マガジン)
Graphyte
How This Startup Turned Taylor Swift’s Super Bowl Carbon Emissions Into a Brilliant Marketing Opportunity(Inc.)
Taylor Swift’s Super Bowl flight shows what’s wrong with carbon removal(Grist)