サッカーW杯賞金の男女格差

女子サッカーW杯の賞金

女子サッカーワールドカップが開幕しました。今大会の賞金総額は1.1億ドルで、前回大会（2019年）の3000万ドルから3倍以上に増えました。

女子サッカーW杯の賞金総額

単位：ドル

開催年	賞金総額
2007年	580万
2011年	750万
2015年	1500万
2019年	3000万
2023年	1億1000万

女子・男子ともに賞金は各国のサッカー協会に支払われ、そこからスタッフや選手に分配されるため、選手が適正な金額をもらえる保証はありません。

そのため、選手たちが賞金から報酬をいくら得るかは、協会との交渉が必要です。たとえば、男子カナダ代表は、2022年のワールドカップ直前のパナマ代表との親善試合でストライキを起こしました。

彼らが求めたのは、ワールドカップの賞金のうち40%を選手に回すこと、男女同一賃金など。

しかし、選手が交渉に挑む国は限られます。選手への支払いに対してFIFAは、相応しい報酬を得られるように、今回の女子サッカーワールドカップで新しい賞金モデルを採用しました。

そこでは賞金の中に、あらかじめ選手への分配分を選手賞金として割り当て、賞金を基本賞金と選手賞金の2つで構成するようにしました。

女子サッカーW杯の成績別賞金

単位：ドル

成績	基本賞金	選手賞金	賞金合計
優勝	429万	621万	1050万
2位	301.5万	448.5万	750万
3位	261万	414万	675万
4位	245.5万	379.5万	625万
ベスト8	218万	207万	425万
ベスト16	187万	138万	325万
グループステージ	156万	69万	225万

今大会、優勝チームの出場選手には一人当たり27万ドル、最低でも3万ドルが約束されています。女子サッカーの選手は男子と比べプロチームとの契約や報酬が少ないため、選手賞金は重要な意味を持ちます（女子プロサッカー選手の平均年収は1.4万ドル）。

選手賞金（一人当たり）

単位：ドル

成績	選手賞金
優勝	27万
2位	19.5万
3位	18万
4位	16.5万
ベスト8	9万
ベスト16	6万
グループステージ	3万

ただし、開幕前夜の会見でFIFAのインファンティーノ会長は、選手への賞金を計上したものの、FIFAが直接選手に支払うのではなく、各国の協会経由になると述べ、実際に選手に支払われたか監督はしないため、本当に計上した額がすべて選手に渡るのか不透明さは残ります。

賞金の男女格差

続いて、男子ワールドカップと賞金を比べていきます。

女子大会の賞金総額は冒頭に書いたように、1.1億ドル。それに対し、2022年開催の男子大会では4.4億ドルで4倍です。過去と比べ金額差は縮まってきてはいるものの、まだ大きな隔たりがあります。

男女W杯の賞金総額比較

単位：ドル

開催年	賞金総額（男子）	開催年	賞金総額（女子）
2006年	2億3600万	2007年	580万
2010年	3億4800万	2011年	750万
2014年	3億5800万	2015年	1500万
2018年	4億	2019年	3000万
2022年	4億4000万	2023年	1億1000万

成績別の賞金も、女子（2023年大会）の優勝チームが1050万ドルなのに対し、男子（2022年大会）の優勝チームは4200万ドルです。

男女W杯の成績別賞金比較

単位：ドル

成績	2022年（男子）	2023年（女子）
優勝	4200万	1050万
2位	3000万	750万
3位	2700万	675万
4位	2500万	625万
ベスト8	1700万	425万
ベスト16	1300万	325万
グループステージ	900万	225万

アメリカ代表の前進

こうした男女格差を是正するために立ち上がったのが、2015年と2019年優勝の女子アメリカ代表です。2016年に5人の選手がアメリカサッカー連盟に対して男女格差の是正を訴え、2019年には集団訴訟になり、2022年に和解しました。

この結果、アメリカ代表は世界で初めて、ワールドカップの賞金を男女で均等に分配することが決まりました。2022年の男子サッカーワールドカップでベスト16だった男子チームの賞金は、1300万ドルでしたが、男女のサッカー協会で650万ドルずつに分けられました（The New York Timesの記事によれば、そのうち90%が選手に渡る）。

大きな一歩である一方で、女子チームの2015年と2019年の優勝賞金の合計が600万ドル。それがベスト16の男子チーム賞金の半分にも満たないことで、男女格差があらためてはっきりしました。

4年後は…

FIFAのインファンティーノ会長は、 2026年の男子大会と2027年の女子大会で賞金を同じにするのが「 Our ambition（我々の野望）」だと述べています。

Our ambition would be, of course, to be able to have equality in payments for the 2026 Men’s and the 2027 Women’s World Cups. This is the objective that we set for ourselves.
─ Gianni Infantino（FIFA President）

実現には商業収入の拡大が必要としていますが、今大会で放映権料の合意が放送局となかなか決まらないということが起きました。

ヨーロッパのビッグ5（イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス）の放送局からの提案は、男子大会の放映権料が1〜2億ドルなのに対し、女子大会では100〜1000万ドルに過ぎないとFIFA会長はInstagramに投稿しました。

さらに、その投稿の中で、女子ワールドカップの視聴率は男子大会の50〜60%で他のどのイベントよりも高いと主張しました。

最終的にヨーロッパでの放送は合意に達しましたが、日本でも直前まで放送が決まらず、放映権での収入はFIFAが目標としていた額には大きく足りなかったようです。

なお、これまで女子ワールドカップの放映権は男子大会とセットだったのが、今大会から別契約になったそうです。